のちほど老子については解説しますが、老子の代表作である『老子』は『聖書』についで、世界中で数多く翻訳されている本といわれています。
『老子』は、上巻と下巻の八十一章からなる本です。
上巻の第一章が「道」(道の道とすべきは、恒の道にあらざるなり…)にはじまり、下巻の最初にあたる第三十八章が「上徳」(上徳は得ならず、是をもって徳あり…)ではじまるところから、『老子道徳経』あるいは『道徳経』『道徳真経』とも呼ばれています。
この「道徳」は、『老子』のキーワードのひとつですが、「宇宙には人為のおよばない法則(道)があり、万物はその道から本性(徳)が与えられる」という意味であって、いわゆるモラルを意味するものではありません。
『老子』には、もともとは章立てはなく、五千数百字の珠玉の言葉で綴られているため、『老子五千言』との別名もあります。
それはまさに人類の古典の中の古典であり、その言葉は悠久の叡智の結晶です。
「道」、そして「無為自然」をはじめとする、その老荘の教えを、本を読んで単に知識を得ようとするのではなく、それを実際に人生に活かし、現実の場に活用し、真理として日々の生活で行じることが肝心です。